ナノファイバーとは

ポリプロピレンやポリエチレンテレフタラートなどからなる高分子ナノファイバー、セルロースや腱やDNAなどのバイオナノファイバー、カーボンナノチューブなどのカーボンナノファイバー、金属からなるナノワイヤなど様々な種類があります。
この中でも高分子ナノファイバーは最も多くの可能性を秘めており応用範囲が広い。
特に繊維径を超極細(ナノオーダー)にすると、抗菌性や超微粒子補足性やスリップフローなど通常の太さの繊維にはない新しい機能が出現します。
ナノファイバーは、マスク、フィルター、水の浄化、無農薬農業などに利用できる環境に優しい素材です。
ナノファイバーの定義

ナノファイバーとは「直径が1nmから100nm、長さが直径の100倍以上の繊維状物質」と定義されています。
従ってカーボンナノチューブやDNAやナノセルロースなどもナノファイバーの範疇に入ります。
ところで直径1μmから10μm程度の繊維はマイクロ(ミクロ)ファイバーと呼ばれます。
直径0.1μm(100nm)から1μm(1000nm)の繊維は特別な呼び名がなくサブミクロンファイバーと便宜上呼んでいます。
しかし600nm(0.6μm)以下あたりから<ナノファイバーの定義>のところで述べたような、抗菌性や超微粒子捕足性やスリップフローなどナノファイバー特有の機能性が出現します。そこで、我々はサブミクロンファイバーもナノファイバーの範疇に含めます。
日本におけるナノファイバーの第一人者

谷岡 明彦
•東京工業大学 名誉教授・工学博士
•【NEDO】先端機能発現型新構造繊維部材基盤技術の開発事業プロジェクトリーダー(総事業費56.35億円)
•株式会社Zetta取締役
最新の製造方法
エレクトロスピニング方式での開発競争が始まり、15年以上の月日が流れましたが、世界中の研究者の間では、繊維径300nmで頭打ちの状況を打破出来ないまま、失望感が広がっていました。
その様な最中、エレクトロスピニング方式に変わる全く新しいゼタ・スピニング(Zetta-Spinning)方式が、米国化学会(ACS)で発表されました。
ゼタ・スピニング(Zetta-Spinning)方式は、圧倒的な生産力(現行の2万倍)を備え、繊維径は100nmを実現し、何より安全性が高い為、失望感が広がっていたナノファイバー業界に衝撃を与えました。
アメリカ化学会(ACS)にて快挙
国際的に認められたナノファイバー製造方式
高橋 光弘と谷岡 明彦による共同執筆のナノファイバーにおける研究成果が、快挙を成し遂げました。
2015年10月、ノーベル賞の登竜門と言われるアメリカ化学会(ACS)において、ゼタ・スピニング方式(ナノファイバーの製造方式)の研究発表が、ベストプレゼンテーション賞を受賞しました。
それに伴い、2016/03/18にACSが出版した『Industrial & Engineering Chemistry Research』に掲載されました。
この掲載は、非常に大きな意味を持っています。
世界中の科学者が会員(162,000人)となっている科学系学術団体ACSに、ナノファイバー製造の新方式として認知されるという事なのです。
2000年からナノファイバーの開発競争が始まり、今まで最も期待されていたのが、エレクトロスピニング方式でした。
新たな産業のキーとなる新素材としてもてはやされ、世界中で国家プロジェクトとして研究開発されました。
エレクトロスピニング方式での開発競争が始まり、16年という月日が流れましたが、世界中の研究者の間では、繊維径300nmで頭打ちの状況を打破出来ないまま、失望感が広がっていました。
その様な最中、エレクトロスピニング方式に変わる全く新しいゼタ・スピニング方式がACSで発表されました。
ゼタ・スピニング方式は、圧倒的な生産力(現行の2万倍)を備え、繊維径は100nmを実現し、何より安全性が高い為、失望感が広がっていたナノファイバー業界に衝撃を与えました。
ゼタ・スピニング方式の登場により、様々な分野で待ち望まれていた新素材の生産が始まります。
アメリカ化学会(American Chemical Society, 略称ACS)とは
アメリカ化学会(アメリカかがくかい、American Chemical Society, 略称ACS)は、米国に基盤をおく、化学分野の研究を支援する学術専門団体である。本拠地は、ワシントン、オハイオ州コロンバス。
ACSは1876年に設立された。現在の会員数は約163,000人と、科学系学術団体としては世界最大のものになっている。1年に2度化学の全領域についての国内会議と、数十の特別分野についての小委員会を開催している。
出版部門では、39誌の雑誌(多くが各分野のトップジャーナルとなっている)と、数シリーズの書籍を発行している。中でも最も古いのは1879年に発行を開始した米国化学会誌(Journal of the American Chemical Society,?JACS)であり、これは現在発行されている全化学系雑誌の中でもトップクラスのインパクトファクターと、極めて高い権威を有する雑誌である。
また、世界で報告される約8,000種類の定期刊行物・特許・学会会議録・新刊図書データを集めた巨大なデータベースChemical Abstracts?(CA)を作成しており、その中でこれまで報告されたあらゆる物質にCAS登録番号をつけている。この化学情報データベースサービス (Chemical Abstracts Service, CAS) は化学者が研究を進める上で不可欠なものであり、またACSにとっては主な収入源となっている。
ACSは国際化学オリンピック(IChO)の代表メンバー4人を選ぶコンテストである、「米国化学オリンピック(USNCO)」のスポンサーとしても活動している。
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アメリカ化学会(ACS)における有機化学の最高賞(ロジャー・アダムス賞)の全受賞者39名中、なんと10名の人がノーベル化学賞を受賞しています。
その他の製造方法
ナノファイバー量産方式であるゼタ・スピニング(Zetta-Spinning)方式が、米国化学会(ACS)にて第4の製造方式として認められるまでは、主に次の3つの製造方式でしかナノファイバーを製造出来ませんでした。
エレクトロスピニング法(電界紡糸法)
分子溶液または溶融状態の高分子に高電圧を印加することで繊維を紡糸する方法で、数 nm まで得ることができます。
通常、数 kV 以上の電圧を用いますが、その電流は小さいため、エネルギー消費量が小さいというのも特徴です。
生産性が低い等の課題がありますが、中心的な製造方法です。
複合溶融紡糸
特殊なノズルから溶融した高分子を押出し、海・島構造(ハスの断面積構造)の繊維を得て、その繊維を分割してナノファイバーとします。
20nm 程度まで紡糸可能と言われています。熱に弱い素材には適用不可能、繊維分割が必要等の課題があります。
メルトブロー法
溶融した高分子をノズルから押し出しながら熱風で吹き飛ばし、細い繊維を得る方法です。
不織布製造法の応用で、工程が簡単ですが、0.5μ以下の紡糸は困難、熱溶融性高分子のみに適用可能等の課題があります。
性質及び用途
代表的な三つの特徴について説明します。
超比表面積効果
単位重量当たりの表面積は、繊維化して、細くすればするほど飛躍的に大きくなります。 このことから「分子認識性」、「吸着特性」等に優れた性質を持つようになるので、バイオフィルター、センサー、燃料電池電極材などへの利用が期待されます。
ナノサイズ効果
ナノサイズの太さを持つことから生じる効果で「流体力学特性」、「光学特性」等が生み出されます。 これにより、圧力損失が低いのにサブミクロン微粒子を完全に補足できる超高性能フィルター、また、ナノファイバーの直径が光の波長より短いことから光の乱反射が減少し、透明度の高い繊維が作り出されるので、光透過性の優れた電子ペーパーなどへの利用が期待されます。
超分子配列効果
高分子鎖がまっすぐ並ぶことから生じる効果で「電気的特性」、「力学的特性」、「熱的特性」等が生み出されます。 導電性の原子や分子を規則正しく配列すれば、非常に導電性に優れた繊維ができるのでモバイル燃料電池などへの利用が期待されます。 また、高分子鎖が真っ直ぐなことから、非常に高強度に、また、構造が緻密になることから大幅に耐熱性が向上します。 「軽・薄・短・小」が必要な分野での高機能複合材料への利用が期待されます。